常世(とこよ)の花嫁様
..女の人の声...?よかった、誰かいた

塔子「......!?」

つかの間の安堵の後私は気付く

口だけがパクパク動いても


声が出ない

身体の自由もきかない
ーーー
眼球だけ動かすのがやっとだった

塔子「...!?」

視界の端っこに髪の長い白い着物の女性ーーー

不気味な表情と血走った目がジロリと私を捉えている

『甘い…いい香りがすると思ったら。。。へぇーなるほどね』

足が片方、異様に太く腫れ上がっているそれを
ドスンと私の前に放り投げて
…舌なめずりをする


『あはっ、今夜のあたしは運がいい』

ーーーズルズルとゆっくりこちらに近づいてくる

ーーー


人じゃないっ!妖だっ!!!
つぅーっ。と背中に変な汗が流れるのがわかった


ーーーこれ、ダメなやつだ


妖『へへへ。誰も助けに来ないのかい?来ないよねぇ?
こんな山奥。可哀想にねぇ、可哀想だから...

私が…食ってやろう!!!』
覆いかぶすように目の前まで来ると
女性の真っ赤な唇がドンドン裂けて大きく開かれていくーーー

お願い!!!
誰か、助けて...

『ど、ドーン!!!!』
その時、一瞬凄い音と共に
あたりが眩しく光ったーーー


妖『…ひ、ひーぃぃぃ!!!お、おのれーーー!!!』

一瞬の出来事だった。。。
光は青白い炎の様に妖にまとわりついて決して離れない
妖『…だ、すげてぇぇぇ』

妖はそのまま焼け続け

地面には灰だけが残った

ーーー。。。

あまりの恐怖に
腰が抜けて動けなかった。。。


『カミナリ…』


立っていた筈の妖が居なくなって、建物の戸があいていることに気づくと同時に


ーーー


そこに小さな人影が見えたーーー


『あんなふうに落っこちるの、初めて見た』


綺麗な目をした、少年がこちらを見て


悪戯そうに、微笑んでいた



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