エリート上司の甘い誘惑

おかげで、いつもは丁寧にスタイリングしている毛先の緩いカールが、今日は少し砕けた印象になってしまった。
それでも、なんとか腫れた瞼だけはメイクで上手く誤魔化せたと思う。


失恋の末、酔って醜態晒してみっともないことこの上ない。
その上、もしかしたら相手が会社の人間という可能性もあると気が付いた時、血の気が下がった。


確か、店で誰かに会った気がするのだ。
その時に、知人だと認識した覚えがある。


これほど出勤が恐ろしいと思ったことはなかった。
別れ話をされた翌日の、園田との遭遇以上に恐ろしかった。


一緒に披露宴に出席した人間なら、顔見知りどころか毎日一緒に仕事をしている相手だという可能性もあるのだ。


それに、洗面所に残された腕時計は一体何なんだろう。
あれは故意なのか、単なる忘れ物なのか。

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