エリート上司の甘い誘惑
時計は返さなければいけない気はするけれど、持ち主を探すのは恐ろしい。
知りたいような知りたくないような、昨夜の事をどう処理すれば良いのか、相手がわからなければどうすることも出来ない。



「腕時計がどうかしました?」

「別に。いい時計だなって」



昼間も思ったけど、やっぱり東屋くんは
除外だ。
大体、酩酊状態の女に手を出すほど女に困ってないだろうし。


……。


ってことは、女に困るタイプの男だったてことか?



「うわ。それもやだな」

「ええっ?どうかしました?」

「なんでもない、ひとりごと。……あっ!」

「えっ?次は何」



駅手前のバス停付近にタクシー乗場があり、駅待ちのタクシーが一台待機しているのが見えた。



「私、タクシーで帰る。東屋くん、今日はごちそうさま」

「えっ、送るって言ってんのに!」



酔ってるせいか、会話がいちいち急カーブ気味なのは自覚はある。
それに振り回される東屋くんにはちょっと申し訳ないが、楽しい。


今日はなかなか、心地好い酔い方だ。
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