エリート上司の甘い誘惑
また呆れられるだろうか、重いため息を聞かなければならないだろうかと心の準備をしていたのだが。
「そうか」
と、至極あっさりとした答えが返ってきて、驚いて顔を上げた。
「間に合ったんだろう。ならそれでいい」
「えっ……」
「なんだ」
「いえ、怒られると思っていたので」
仕事に集中出来ず、それがミスにつながったのだ。
当然多少のお叱りを覚悟したのに、部長の言葉は厳しいものではなくて、声は優しすぎるくらいだ。
ぽかん、と見つめる私に部長の口元が少しだけ緩む。
あ、笑った……と気付いた途端、見つめすぎていた自分が恥ずかしくなって顔の熱が上がった。
「生真面目なお前のことだから、充分身に染みてるだろう、俺が言わなくても」
これまで頑張ってきた自分を、見ていてくれたのだと信じられる言葉だった。
それだけじゃない。
この数時間、自分のミスだからと片意地を張って凝り固まっていた自分から開放されたような気がした。
「はい……身に染みました。ミスに繋がるって思ったら……」
怖くて仕方がなかった。
力が抜けた途端に涙腺まで緩みそうになり、きゅっと下唇を噛む。
「だが、そういう時はちゃんと誰かに助けてもらえ。ミスくらい誰にだってあるんだから一人で解決しようとするな」
「はい、すみません!」
そこだけは急に語気が強くなり、私はまた背筋を伸ばす。
だけどその拍子にぽろっと涙が落ちてしまった。
しまった、と慌てて俯いて顔を隠したけど、しっかりと見られてしまった。
突然、くしゃくしゃっと乱暴に、部長の手が私の頭をかき混ぜる。
「くだらない。泣くほどのことじゃないだろ」
「や、やめてくださいそれ。余計に泣けます!」
大きな手がすごくあたたかく感じて、余計に涙が零れそうになる。