イケメン御曹司のとろける愛情
「あ、奏美さんはもう帰っていただいて結構よ」

 円崎さんは口を開くのも億劫だ、と言いたげな口調で言った。でも、こんな状態の女性を一人置いては行けない。円崎さんへの罪悪感も手伝って、私は首を横に振った。

「いいえ、なにかあったらいけないので、水無川さんが来るまで一緒にいます」
「帰ってくれていいのに」
「そういうわけにはいきません。だって、円崎さん、まっすぐ立ててないですよ?」
「まぁ、そうね」

 円崎さんはつぶやくように言って、壁にもたれたまま目を閉じた。
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