イケメン御曹司のとろける愛情
 なんてタイミング。

 胸騒ぎを覚えながら通話ボタンにタップした。

「もしもし」
『奏美さん? 水無川です』
「あ、はい」
『悪いんだけど、十分か十五分くらい遅れそうなんだ。エントランスじゃなくて直接グラッタチエロに行って待っててくれないかな? 水無川で予約してるから』

 翔吾さんの申し訳なさそうな声が言った。

 翔吾さん、遅れるんだ。あんな記事を見たあとだけになんだか不安。それに、一人で高級レストランに入るのはちょっと勇気がいる。

「そのくらいならエントランスで待ってますよ。一緒に行きましょう」
『あー……できれば先に上がっててほしいんだ』

 翔吾さんが困ったような口調で言った。

 私は別にエントランスで待っててもいいんだけど……。

「わかりました。翔吾さんがそう言うなら」
『ごめん』
「いいですよ。じゃあ、レストランで待ってますね」
『なるべく早く行くようにするから。それじゃ、あとで』
「はい」
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