【短編】ずるいよ、律くん
腕の中でぐったりしている私を一瞥すると、クールで淡白な彼は少しだけ馬鹿にしたように笑ってから、やけに優しく目を細めて、


「……これだけじゃ足りないと思っちゃうぐらいには、愛されてるんじゃない?」



なんて、それはそれは甘いセリフを囁いたんだ。



「…ずるいよ、律くんは」

「そんな俺と、ずっといっしょにいたいんでしょ?ツリーに頼ってでも」

「っ、そ、そうだけど…」

「ふ、そうなんだ」

「…はっ、しまった」



うっかり素直に白状してしまった私に、『じゃあとりあえず今夜はずっと一緒にいてみる?』なんて卑怯な誘い方をする彼からは、きっと到底離れられないんだろう。


・・・それでも。他のものに頼るくらいなら、私は彼を頼りたい。ずっと一緒にいたいと思ったら、ツリーじゃなく、律くんに直接伝えたい。

ジンクスの力じゃなくて、私たちの力で、ずっとずっと隣にられるように。
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