課長の瞳で凍死します ~伊勢編~
 


 その店は、いい意味で、昔ながらの喫茶店、という雰囲気だった。

 他の人が頼んだランチの匂いを嗅ぎながら、お茶をする。

 雅喜はテーブルに置いたタブレットの写真を見ていた。

 先程撮った、真湖の写真だ。

 マッサージチェアに座っただけの真湖。

 服を着たまま、シャワーを浴びているふりの真湖を見ながら、

「……莫迦だな」
と雅喜は呟いていた。

 いや……貴方がやれと言ったんですよね、と思いながら、ミックスジュースを啜る。

 バナナの強い、懐かしい味がした。



< 46 / 48 >

この作品をシェア

pagetop