クールな次期社長の甘い密約


――翌日、日曜日……


お昼前にベットから出た私は、ぼんやりとした頭で昨日の事を思い出していた。


まさか津島物産の会長と母親の実家との間に、あんな関わりがあったなんて……そして、その事を知らなかったのは私だけ。周りの人達は皆知ってたんだ。


昨日、専務にマンションに送ってもらった直後、母親に電話をして就職の件を確かめてみたら、母親は悪びれる様子もなく『そうよ』って平然と認めた。


母親曰く、私に会長のコネだなんて言ったらビビッて津島物産には行かないって言うに決まってる。だから秘密にしていたと。


まぁ、確かに事実を告げられていたらヘタレの私は津島物産には就職しなかっただろう。それは結果として良かったのかもしれない。でも、もう一つ、心に引っ掛かっていた事があった。


会長に褒められた時の専務の嬉しそうな顔と、あの言葉――


"親父がなんだかんだ言っても、津島物産の実権を握っているのはじいさんだからな。これで俺は間違いなく社長になれるよ"


こんな事考えたくないけど、専務は会長に気に入られる為に私と婚約したんじゃ……


「いやいや、いくらなんでもそんな……」


思わず声に出して否定したものの、会長が専務の実力を認めていない様な口ぶりだった事が気になる。


そうなると、専務が私に好意を持ってくれた事自体が不自然に思えてきて、どうしても真実を知りたいという思いが強くなっていく。


「そうだ。倉田さんに聞けば、何か分かるかも……」

< 213 / 366 >

この作品をシェア

pagetop