クールな次期社長の甘い密約

倉田さんの近くに専務が居るかもって思ったけど、知りたいという気持ちの方が勝り、ディスプレイに表示された倉田さんの名前をタッチしていた。


騒ぎ出した心臓を押さえスマホを耳にあてるが、倉田さんはなかなか電話に出てくれない。


専務が傍に居るから? それとも、忠告を無視した私に怒っているの?


諦め掛けた時、やっと倉田さんが電話に出た。出たら出たで焦ってしまいシドロモドロ。


「えっと、ですから、専務の本当の気持ちが知りたくて……倉田さんは全部知っているんでしょ?」

『それを聞いてどうするんですか?』

「どうするって言われても……」


倉田さんのつれない言葉を聞き、やっぱり怒っているんだと思い電話を切ろうとしたんだけど……


『いいでしょう。お教えします。しかし、電話ではなんですから今から大沢さんのマンションに行きます』

「へっ? 今からここに? 専務は大丈夫なんですか?」

「専務は社外取締役の人達とゴルフに行っています。夜まで帰って来ないでしょう」


専務の事はよしとしても、倉田さんを部屋に入れるという事に抵抗があった。だから、どこか外で会おうと提案したんだけど、それなら教えないと即答されてしまった。


倉田さんったら、人の弱みに付け込んで好き勝手言ってる。でも、ここで断ったら真実を知る事が出来ない。


仕方なく「分かりました」と答え、電話を切った。


そして三十分後、倉田さんがマンションに来た――

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