クールな次期社長の甘い密約

確かに専務に好意は持ってる。素敵な人だと思うし、彼に見つめられるとドキドキする。でも……


「こんな私が専務と釣り合うはずがありません」


そう言う私の額に麗美さんのデコピンが炸裂し、怖い顔で睨まれた。


「どうしてそう思うの? 専務が茉耶ちんに気があるのは確かだよ」


そうなのかな……けれど、見た目は変わっても性格はそう簡単に変えられない。ずっと人目を避けて生きてきたんだもの。いきなり自信満々になんてなれないよ。


呆れ顔の麗美さんに、ちゃんと専務にお礼を言いなさいって強い口調で念を押され社食を出るが、結局、その日はお礼の電話を掛ける事が出来なかった。


それから毎朝、専務が出勤時に優しい笑顔を向けてくれたけど、挨拶するだけで精一杯。お礼を言う機会を完全に逃してしまった。というか、森山先輩が隣に居るから声を掛ける事なんて出来ない。


そんな風だから麗美さんと顔を合わすのが気まづくて、あれ以来、一緒にランチも行ってない。


そのランチからちょうど一週間が経った午後。麗美さんから《仕事が終わったら飲みに行こう》とラインが来た。


うわっ! まだ専務にお礼言ってないし……どうしよう。


これはヤバいと思いトイレに行くフリをして誰も居ない廊下の隅でスマホを取り出す。


仕事中にこんなプライベートな電話をするのは気が引けたけど、今しかチャンスがない。だが、幸か不幸か留守番電話の音声が聞こえ、専務は電話に出なかった。


ホッとしてお礼のメッセージを入れて電話を切る。


良かった。これで、大義名分が立つ。

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