ドストライクの男

「その方が私を探していた? どういうことかしら?」
「キャッ、そうなのよ、その白鳥様が……というわけで」

ピッピッとスマホを操作するミチェル。

「あっ、白鳥様、見つけました。図書館にお越し下さい」

ニッと笑むとそばかすの頬がキュッと上がる。

「キャッ、すぐにいらっしゃるって。愛されているわねぇ」

愛されている? この流れの何処に愛情を示すポイントがあったのだろう?

「でねっ、でねぇ」と話し掛ける難解不落のミチェルをボンヤリ見つめていると、そこにミチェルが言ったように、物語の挿絵に似た白鳥の王子が現れた。

小鳥の目の前に立った王子は、気品と色気を纏いながら、右手を心臓の上に置き紳士のお辞儀をした。そして、仰々しく言った。

「小鳥ちゃん、好きだよ」と。

初対面でこの王子は何を言っているのだろう、と小鳥が思っていると、彼は腰を折り、小鳥を優しく抱き締め、フワリと唇に唇を重ねた。

ファーストキス。

「好き」も「愛している」も言われぬうち、突然されたキス。
そう、これが小鳥のファーストキスとなった。

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