ドストライクの男
だが、驚くことに返ってきた言葉は、光一郎の予想を外すものだった。
「恐れはあります。そして、私はおバカさんではありません。自慢ではありませんが、私、IQは209あります」
淡々と述べる小鳥に、光一郎はポカンと口を開き、一拍置くとアハハとお腹を抱え笑い出した。
「IQ209……天才と何とかは紙一重というが本当だ。相変わらず面白い」
相変わらず? 言葉の使い方を間違えていないか?
小鳥がジッと光一郎を見つめていると、やっと笑いの収まった彼が聞く。
「可愛いおバカさん、確認するけど名前は?」
知能指数を知っても、やっぱりおバカさんかぁ。
珍しいものを見るように、光一郎を見ながら、小鳥は素直に名乗った。
名前を聞くと、何故か光一郎の瞳が妖しく光る。
そして、満足そうに微笑んだ。
本当に意味不明な男だ。
改めて小鳥が思っていると、更に、意味不明の言葉が続いた。
「あのね、これから部屋に入る時は確認して入るんだよ。それから、僕以外の男性と部屋で二人切りとか止めようね。本当に襲われるから。約束だよ」
頭をポンポンする光一郎が父のように思え、思わず小鳥はコクリと頷いたが、疑問は残った。
僕以外の男性? では彼となら二人切りでもいいのだろうか?
IQ209の小鳥だが『感情』という曖昧な分野は苦手だった。
だから気付かなかった。
光一郎が愛し気に優しい眼差しを彼女に向けていたことを……。