ちいさなキセキ
 入学式が終わった。
 学級への移動中のこと。
「ねぇ、乙偉。あの先生ウザそうじゃん?」
「・・・」
「乙偉・・・そんなに固まらないでよ」
 ホントに寂しいんだよ、と凌が言う。いやそんなことより。
「何であの子がいるんだよ・・・」
「ははっ。あの子が一目惚れした子?」
 そう。俺の視線の先にいるのは、紛れもなく桜の木の下で会ったあの子。
「これが一目惚れなのか?」
「いや知らねえよ。お前の心だろ」
「そうか」
 凌に一瞬視線を移し、また宙に泳がせる。
「一目惚れ、か・・・」
 一目惚れ、したのかもわからない。
 こんな気持ち、生まれてはじめてなんだから。
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