君が嫌いな君が好き
観覧車が頂上に到達して、少しずつ下へと降りて行く。

ああ、もう終わっちゃうんだな…。

ここを出て、遊園地を後にしたら、この手は離れてしまう。

もう少しだけ繋いでいたいのに…。

下へと降りて行く景色から目をそらしたら、ギュッ…と手を握られた。

突然のことに久米に視線を向けると、彼は私から目をそらした。

何なのよ、これは。

あなたも同じ気持ちなんだって勘違いしそうになっちゃうじゃない。

せめて、何か言ったらどうなのよ?

心の中の声は当たり前だけど、久米の耳には届いていない。

「もうすぐで降りるね」

そう声をかけてきた久米に、
「…そうだね」

私は呟くように返事をすることしかできなかった。
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