君が嫌いな君が好き
「正確に言うならば、その話はあったんだよ」

久米が言った。

「“あった”?」

何で過去形なんですか?

「結婚の話はあったことはあったんだけど、今はなかったことになったんだ」

「えっ、何で?」

何があってなかったことになっちゃったの?

久米は少しだけ言いにくそうな顔をすると、
「その…俺と結婚することになっていた令嬢なんだけど、どうやらつきあっていた人がいたらしいんだ」
と、言った。

「そうなの?」

私が驚いて聞き返したら、
「その人との間に子供ができちゃったから、俺との結婚はなかったことになったんだ」

久米が答えた。
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