君が嫌いな君が好き
仕立てのよさそうなグレーのスーツからして見ると、かなりの金持ちかも知れない。

ま、私には関係がないことだけど。

彼から目をそらすと、カクテルを一気に飲み干した。

「マスター、同じヤツをもう1杯」

「5杯目」

ボソリと、隣に座っている彼が言った。

「何よ」

ムッとなって私は彼に視線を向けた。

「飲んでいるカクテルの回数」

そう答えた彼の声は声優なのかと聞きたくなるくらいにセクシーで、低い声をしていた。

「数えてたの?

ずいぶんとヒマなのね」

そう言い返した私に、
「まあ、ヒマだね」

彼は認めたと言うように言い返した。
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