諦めた夢を古本屋『松岡』が叶えます


「……」

 笑顔で話しかけてきた母親は右手にのど飴を持ち、私にのど飴を渡そうとしていた。

 私は靴を履いて、後ろを振り返って母親と向き合った。

「どうしたの? 持ってきなさい」

「いらない」

「どうしたの? いつもは持ってくじゃない」

「いらないって! 私はのど飴なくたって頑張れるから、母さん。私は私なりに頑張ってるから。自分の手で掴んでくるから」

 睨めつけるように母親を見てから、外に出た。

母親は私のことを呼んでいたが、そんなの気にしなかった。

自分がやりたいと思える仕事を見つける。
 それを叶えるために私は前を向いて、真っ直ぐに背筋をピンと伸ばして歩いた。
< 157 / 197 >

この作品をシェア

pagetop