秘密の交換をしよう


……美穂ちゃん、本当に楽しそうだ。



「何歳なの? その佐倉翼って人」



香織ちゃんは呆れたような顔をしながらも、会話を広げた。



「二十一歳だよ。あたしたちの二つ下」


「じゃあ、美穂はその子を狙ってるわけだ」


「それがね、翼君、彼女いるんだって。だから、翼君にアプローチする人はほぼゼロ」


「で? どうしてその子の話を?」


「リンリンが翼君のお世話係になったから」



……はい?



「私、企画の……」


「昨日無断欠勤したせいで、下ろされたみたい」



……悲劇、再びとでも言っておこう。



高校生時代にわかってたことだ。


無断欠勤したら問答無用でクビになる。



それに、今回は失恋のショックで無断欠勤。


クビになったって文句は言えない。



「……わかった」



私の小さな声は、電車の音でかき消された。

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