秘密の交換をしよう
俺の言葉を待たずに、父親が言った。
「あたしだってないわよ! あたしが育てるんだったら、遥真の教育費、払ってよね!」
「それくらい、お前が稼げ。そんなガキに払う金など、一銭もない」
また、始まった。
俺は部屋の隅に後ずさる。
父親にも、母親にもついて行きたくないと、思ってしまった。
だけど、もしそんな選択肢を選んだら、俺はどうなる?
捨てられるのか?
それならば、母親について行ったほうがいいのかもしれない。
父親は、真っ先に俺を見捨てるようなことを言った。
そんな奴と、上手くいくわけがない。
「俺! 母さんに、ついて行く、よ……」
口喧嘩中の二人に聞こえるように、大きな声を出したはいいが、二人の目が怖くて、語尾は小さくなってしまった。
俺の言葉で、口角を上げる父親と、頭を抱える母親。
……俺、生まれてこないほうが、よかったのだろうか。
二人の反応で、ようやく感じた。