17のとしに

昔と今

 あの頃、皆悩んでいた。受験勉強と複雑な年齢と家庭環境が相まって、自分たちを正当化しようとしていた。私もその一人だ。私たちは私たちの悩みを吐き出してその不安を何とか誤魔化していたのだ。
 部活を引退し、高校受験に向けて学年全体の士気が高まってきた。秋。私たちはちょっとした理由でかかわりを持った。奈央と私が同じクラスで友人、奈央と初が去年同じクラス、初と春希と誠也が今年同じクラス、私と春希が同じ委員会、誠也と奈央が同じ委員会だった気がする。それくらいの接点だったのだ。しかし、不思議なもので5人偶然どこかのクラスの遭遇した際、違和感も疎外感も感じずなんとなく、なんとなくではあるが関わりをもつことができたのだ。なんとなく、なんとなくそれぞれが会話をするようになった。私がそう気づいたのは奈央と春希が何気なく昼休みに言葉を交わしている時だった。
 給食の片付けが終わり、奈央が教室へ戻る時だった。あたりは昼休みの喜びや黄色い声で溢れていて、無節操な状態になっていた。私はそんな時間が苦手だった。
「ねえ、奈央奈央」
通りかかった教室から春希が顔を出したのだ。
「なに?」
「数学の教科書持ってる?」
「今日数学ないから持ってないよ」
さらりと答えると
「え~!俺教科書捜索中だからないんだよなぁ」
「ほかの友達に借りなって」
止めた足を動かし始めた。
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