17のとしに
 はじめはこんなものだったのだ。お互いの関わりなんてものは。奈央の些細な関わりから始まり、帰着する気がする。私自身も奈央のことが好きだから。それだけは言える。
 
 ある秋の日。部活動も引退し、同級生たちはぽっかりあいてしまった昼休みの時間をどこか足りなそうにしている気がした。勉強をしている者、遊んでいる者様々ではあるが、受験という大きな壁に立ち向かうことを全体的に見ればまだ拒んでいる気がした。私もそんな物足りない日々を送っていた、時だった。奈央がルーズリーフいっぱいに綴ったメモを得意げに見せてきたのだ。
「何これ?」
アダルトチルドレンとかそういう概念だった気がする。私にはわからないけど、何となく奈央の意思は分かった。私たちを調べていたのかもしれない、だからこんな誤字だらけのメモを、しかも数枚用意したのだろう。
「これで誰か救えるかなって思って。分かって、自分を助けられればいいなぁって思ったの」
「そっか」
色々な概念が綴られていた。私にはよく理解できない言葉もあった。 決め方は簡単だった。だいたい奈央の考察と、本人の確認。それがあればとりあえず決まった。
 その概念を馬鹿にする訳でも、遊びに使うわけでもないが、恐らく、1番の方法はそれしかなかったんだろう、と思う。

 …奈央自身も何かで精神を病んでいたのかもしれない。

 きっと今聞けば初や誠也は何か教えてくれるだろう。もっとも聞く勇気もないのだが。一生、彼女の心を知らないまま、適当にずるずると付き合って行くのかもしれない。罪悪感を解けても私の罪はなかったことにはならないからね。
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