17のとしに
 やはり暗い部屋の中。携帯が放つ灯りだけを頼りに、私は泣いていた。
「やっぱり私は生きていちゃ駄目なんだ、駄目なんだ、もうどうすればいい」
涙が止まらない。私は、中川まなみは、どうしてこうも上手に生きることができないのか。また友達に戻れたと思っていた白井奈央に何故そういうことをするのだときつい声で胸を刺された。そりゃ、当たり前だ。これを受け入れる人間の方が少数派だし、駄目なんだろう。与えられていた勉強机にしまい込んでいたさびれたカッターを取り出す。ぼさぼさになった髪の毛が涙の流れる顔にまとわりついて、気持ち悪い。
 薄手の長袖の左側をめくる。そこには薄く切り刻まれた傷があった。いわゆるリストカットとかいうやつだ。もういやだ、の思いで左手首に刃を立てる。いやになったらこんな事に逃げるからいけない。

 姫。中学の時につけられたあだ名。奈央が提示したプリンセスの分類である、過保護ぎみで自分の意思を失う、という状態らしい。私はそんなこと無いと思っていた。実際、今年の春に5人またつながろうといったのも私からだし。それでも、「罪悪感から逃れたい」というものはいけなかったのだろうか。自分の利益のみを考えているから…。

 それは10月の少しだけ肌寒い頃だった。
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