ここからはじまる恋

なんとか苦戦しながら、ペスカトーレを食べ終わった。おいしかったけれど、こんなにも緊張したランチタイムは初めてかもしれない。

『あなたに会うための口実』と言ってもらったけれど、どう返事をしていいのかわからず、『はぁ』としか言えなかった。

「ティラミス、食べますか?」

それでも空さんは気にしない様子で、私に笑顔を見せた。

こんなとき、男性慣れをした大人の女性なら、どんな返事をするのだろうか。自分が子どもであるのを思い知り、落ち込みそうになりながらも、笑顔でうなずいた。

「その笑顔、癒されます」

また! どう返事をしたらいいの? 頬はますます真っ赤に染まった。

ティラミスを注文した後で、空さんが名刺ケースから一枚、名刺を取り出すと、ボールペンでなにやら書き始めた。

「これ、連絡先です」

「へ……」

「連絡、お待ちしています」

間の抜けた返事しかできない私に、空さんは間髪入れずに続けた。

「は、はい……」

声を絞り出して返事をすると、空さんは優しい笑みを浮かべた。

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