ここからはじまる恋

ほら。やっぱり、大丈夫じゃなかった。

『これ以上、紗良ちゃんに、寂しい思いをさせたくないから』

……って、フラれた。

『寂しい思いをさせたくないから』

なんて、言い訳だよね。本当にそう思うのならば、別れを選ばないで、私をシンガポールに連れて行くはず。

それに、付き合って一年記念日を忘れている時点で、私……愛されていなかったんだ……。

男なんて、星の数ほどいるんだから。あの人じゃなくても、平気。そう自分に言い聞かせるけれど、涙が止まらない。

魅力がないんだろうな、私って。しばらく恋は、休業かな。

明日は、お父さんとデート。歯科医のお父さんは、いつも穏やかで優しい。私の理想の彼氏像は、お父さん。どこかにいないかな? お父さんみたいな人。

あ。
しばらく恋は休業にするんだったっけ?

ベッドに潜り込んで、目を閉じる。いつか、素敵な王子様に出会うことを夢見て。








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