癒しの田中さんとカフェのまみちゃん
そして、今、私は面接を受けている。

4月、ちょうど新年度。私にとって、何かが変わり始めるかもしれない。
面接試験だというのに、
緊張というよりは、むしろ、期待感の方が大きかった。

いつも下ろしているセミロングの黒髪を後ろで1つ縛りにして、
清潔感のある感じに仕上げた。
あと、愛想よく見えるようにいつもは眼鏡なのだが、
今日はコンタクトにしてきた。

私の目の前にいるのは
シアトルアップルB.C. square Tokyo店の店長、
桜井 進(さくらい すすむ)さん。
33歳でスノボでもしそうなタイプのイケメンだ。
桜井さんは、もともと商社にお勤めだったそうだが、
日本1号店の立ち上げを知り、転職をされたそうだ。
そして、昨年1年間シアトルでコーヒーについての研修を受け、
出店を機に責任者になったのだそうだ。

「英語で接客ができる人」ということと時給の低さがネックになっていたのか、
応募者はあまりいなかったらしく、あっさり決まった。

「白石さんは、スキルがあるのに定職につかないの?」

桜井さんが質問してきた。

「好きな仕事をしたいのと、
そのための勉強の時間を確保したかったんです。
翻訳と通訳の仕事で収入がある月とない月との落差が激しくて…。」

「うち、安いけどいいの?何か、リクエストある?」

「時給の件は承知しています。
ただ、通訳の仕事が突然入ることもあり、
急なシフトに対応していただけるとありがたいです。
あと、できればAM10:00からPM2:00での勤務が希望です。」
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