癒しの田中さんとカフェのまみちゃん
「はい。昨日、カフェの仕事が終わってから、
自宅で翻訳の仕事をしていて、
食べるのも忘れて仕事をしていたから、
おそらく、食べていなかったことと
睡眠不足のせいだと思います。」

「仕事熱心なのはいいけど、
かえってみんなに迷惑をかけるからね。
食べるときは食べる。寝るときは寝る。」

「はい。」

「点滴は栄養剤。あとちょっとで終わると思う。
そしたら、帰っていいよ。
さっき、カフェにも連絡いれておいたから、
誰かが荷物をここまでもってきてくれると思うよ。」

「何から何まですみません。」

ちょうど点滴が終わったころ、
涼太さんが私の荷物を持ってクリニックに迎えに来てくれた。

「まみちゃん、大丈夫?俺、車で来てるから送っていくよ。」

「でも、涼太さん、お仕事、まだありますよね。」

「大丈夫。マスターからの命令。
健が頑張ってくれているはずだから。」

「ありがとうございます。お言葉に甘えます。」

「そうそう、これ、葵さんと健から。」

そういって渡されたのは紙袋。

「マスターが先生から栄養不足の件を聞いてね、
これは、サンドウィッチと葵さん特製スープ。
こっちのレトルトのおかゆとカットフルーツは
健がコンビニで買ってきたらしい。」

「ありがとうございます。」

涼太さんとのやりとりをきいていたさやかさんは、

「まみちゃんはみんなに愛されているわね。」

と一言。
自分でもそう思う。みんなの優しさが身に染みる。

「急にいろいろ食べると胃に負担がかかるから、
ゆっくりね。きちんと噛んで食べろよ。」

と井口先生。

井口先生とさやかさんにお礼をいい、
涼太さんと一緒にクリニックを出た。

涼太さんはご自分のアパートとは逆方向にもかかわらず、
私を送ってくれた。
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