癒しの田中さんとカフェのまみちゃん
真美奈はハムエッグ、トースト、野菜スープを用意してくれた。

「うわぁ、うまそう。」

「お口に合うといいんですが…」

「いただきます。」

真美奈は心配そうに俺の顔を見た。

「うん、おいしい。」

その一言が聞けてほっとした様子だった。
こういうところがかわいいと思う。

「このフロアは、2世帯が入れるようになっているんだ。
最初、このビルが建設されている最中は兄夫婦と
俺の2世帯の予定だったんだ。
ところが、兄夫婦に子供ができ、
俺の両親の住む世田谷で同居することになったんだ。
それで、今、隣の世帯は誰だと思う?」

「私の知っている人ですか?」

「そう。」

「もしかして、井口先生とさやかさんですか?」

「正解!」

「このビルにあるホテルは
B.C.Building Inc.が経営しているんだ。
このビル自体、有名企業が中に入っているから
VIPの利用頻度も高い。
VIPの体調不良に対応できるようにするために
急患の対応を井口がやることになったんだ。
そのためにはホテルに近いところに住む必要があって、
彼らは隣に住んでいるんだ。」

「大変なんですね。」

「まぁ、井口は大学病院で働いていたころより楽だし、
こんないいところに安く住めるからラッキーって
感じのことを言っていたけどね。」

「確かに、ここ、素敵なところですものね。」

「そうだろう。だから早く引っ越して来いって。」

「ありがとうございます。
でも、私のようなものが住むところでは
ないような気がするんです。」

「でも、もう真美奈は俺の婚約者だから。
あっ、指輪を用意していないから実感湧かないか…。そ
れは今晩にでも一緒に買いに行こう。」

真美奈は恥ずかしがって、真っ赤になっていた。
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