癒しの田中さんとカフェのまみちゃん
ヘリに乗り込み、両親が住んでいる福岡へと向かった。
悟さんのお父様のお知り合いの方が所有しているヘリポートに着陸し、
そこからタクシーで両親のもとへと向かった。

両親は大学の近くにある官舎で暮らしている。
呼び鈴を鳴らす。
久しぶりに会う母が

「いらっしゃい。」

と出迎えてくれた。

「はじめまして、先日お電話いたしました田中悟です。」

「どうぞ、お上がりください。あなた、田中さんがお見えよ。」

「いやぁ、田中くん、待っていたよ。
この頑固な娘の心を変えた人はどんな人なのか早く会いたかったよ。」

父も上機嫌だった。昼食にお寿司を食べながら、二人の出会い、
結婚に対して真剣に考えていることを悟さんも私も両親に伝えた。

両親とも研究者なので、翻訳の仕事にこだわる私を
理解しつつも心配していた。

「好きなことを仕事にしていけるのは一握りだ。」

というのが父の口癖だった。
父はたまたま自分の研究をそのまま仕事に直結できたが、
父と一緒に大学院で学んでいた人たちのうち3分の2は、
サラリーマンや中学や高校の教員で研究とは違う仕事に就いた。

そういう状況を知っているからこそ、
どこか私のことを心配していた。

悟さんは私と結婚したいということのほかに
翻訳ソフトの開発を行うにあたって、
ビジネスパートナーとしても大切な存在であることを
両親の前で話してくれた。

また、悟さんの家が上流家庭であることに対し、
環境が違いすぎるのが心配だという話を母がしたときには、
私が世田谷の家の人たちに認められていることを話してくれた。

「田中くん、真美奈のことをよろしく頼むよ。」

「私も田中さんに感謝いたします。ふつつかな娘ですがよろしく頼みます。」

父も母も悟さんに対して好印象を持ったようだった。


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