秘密の告白~おにいちゃん、あのね~
*Episode 1* 遥姫-はるき-
 時をさかのぼること、中学3年生。
中学卒業後は、就職すればいいと思っていた。

新聞配達や工事現場などのあまりお給料はよくないけれど、何もないよりはと思い、進路相談のときに当時の担任に聞かれたから答えたら、ため息をついて笑われた。

「お前の気持ちもよくわかる。家の状況も、聞いている」

「けど、僕は母の負担になりたくはありません」

 当然の気持ちのことを伝えると、困った顔で笑った担任は、僕がきちんと書き込んだ進路調査票を裏に返して何やら書き込んでいく。

「いいか、卒業してすぐ仕事をするにしても、お給料は……」

 真剣な表情で、理論的に数字をあげていく担任。

これも仕事なのだろうけど、本気で僕の将来に期待してくれているのだろうか、と淡く広がる胸の温もり。

「いくら働くにしても、まずは高校を出ろ。お前がどんなに有能だろうと、まずはその中卒という学歴で弾かれる。会社はお前を評価するのは入社してからだ。それまでは周りより1つでいいから目立ってみろ」

 もちろんいい意味でな、とニコリと笑う。

当時の僕にはそれに反論したり、反抗する余裕や知識もなく、ああそうなのか、と、ただただオトナと自分との差に愕然とした。

そんな話も、いつの間にやら担任から親に伝わってしまい、後日三者面談が行われた。


「本当にすみません!!」

 土下座の勢いにも似た深々と頭を下げる母の姿に、やはり自分はおかしなことをいってしまったのか、と反省した。

「まあまあ、お母さん。匠くんも自分なりに考えた自分の将来の話ですし」

 そう、僕が考えられる、僕の道だった。

ただ、それを行うには自分があまりにもコドモすぎて、担任も母も驚いたのだと理解する。

「息子にはよく言っておきますので…!」

「お母さん、そんなことないですよ。彼は彼なりに自分の道を探し始めたんです。いいじゃないですか、親のために働きに出る、という選択がある中学生はなかなかいませんよ」

 そんな風にやさしく言う担任に、なんだか無性に救われたような気持になったのを覚えている。

「東、まずはお前のやりたいこと、お母さんと話してみなさい。できること、できないこと、それから先生やお母さんと探して見つけていこう」
< 5 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop