ふたりぼっち

act.8 内緒、内緒。

「ん、……」


目を覚ますと、そこはベッドの上だった。


背中や肌から伝わる感触からして、私はベッドの上に仰向けになっている。

……って、あれ?

朝にも同じようなことがあった気が……。

でも、どんなことだっただろうか……。


……あれ、思い出せない。


どう、して……?


私は、一体どうしちゃったの……?


あれ?

私の、名前……は……そうだ、私の名前は鮎川 春。

しっかりしなくちゃ。


なんだか頭が、ボーッとする。

「ここは……? 」



起き上がり辺りを見回せば、真っ白のカーテンとベッドが視界に入る。

ここはどうやら、病室のようだ。

室内には病院独特の薬品の香りが漂い、枕元にはナースコールが置いてある。

私は、一体どうして病院なんかに……。


部屋の二階に上がったところまでは覚えている。


けれど、それ以降がどうしても思い出せない。


記憶にポッカリ穴が空いたような……何も、思い出せない。


そもそも、どうして私は二階に上がったんだっけ……?


なぜ私は、あの家にいたんだっけ……。


「私、一体どうしちゃったんだろう」


ベッドの上で頭を抱えていると、病室の扉がガラガラッと開いた。
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