キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
これでもかというくらいの速さで階段を駆け下りて玄関へ向かう。
直接藍から電話がかかってきてたらどうにかなったけど、星渚が電話をかけてくるあたりこっちに拒否権もなにもない。
車で来るってことは藍は今運転中だろうしかけても無駄な気がする。
とりあえず校門へ行ってみると、もうすでに車がとまっていた。コン、とノックすると藍が気づいてくれる。
「明日歌ちゃん!」
「藍こそ何でこんな車で」
「今日が何の日か分かってるだろ。行くよ、空港。今ならまだ間に合う」
「……ごめん、私行かない」
「アメリカに行っちゃうんだよ」
「知ってる。でも私は、応援するって決めたから」
「本当にそれでいいの?本音は、別にあるんじゃないの?」
「そんなこと……」
「明日歌ちゃん」
パシッ、藍に手を握られる。
「もう一度聞く。本当に、香澄達がアメリカに行っちゃっていいの?会えなくて、いいの?」
「それはっ」
「――今しかないんだよ」
今しか、ない。その言葉がすとんと胸に落ちてきた。
「今しかないんだ。言いたいことがあるなら、あとじゃダメなんだよ。今言わないと」
「……私は……」
「自分の気持ちに、正直にならないと。だって答えはもう、明日歌ちゃんの中にあるだろ?」
「私の、答えは」
本音を抑えていた蓋が、壊れていく。
「今の明日歌ちゃんの想いを伝えなきゃいけない相手がいるはずだ」