朧咲夜ー番外篇ー【完】


『思わないね。母さんを捨てた最低の人間だ。

更に、後継者がいることがバレれば歓迎される家だ』


『歓迎?』


『妻に子どもがいない。そして、跡取りがほしい家柄。

そういうところを困らせるには私のことは知られないのが一番。簡単な復讐だよ。

……ヘンかな?』
 

親に逢いたいと思わないことが。
 

見つめられ、暗にそう問われて、咲桜は膝の上で拳を握った。


『……ううん』
 

そうだ。


『ううん。ふつう、だと思う』
 

だって自分も、斎月と似ているから。
 

斎月は唇の端を歪めた。


『さすが咲桜姉様。流夜兄さんの恋人』
 

斎月にそう称されることが、とても嬉しかった。
 

最高の褒め言葉だよ。


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