朧咲夜ー真相ー【完】
「………」
黙りこくる流夜の目は、悔しそうだ。
順調じゃない?
「だったら、早く咲桜のところへ帰らなくちゃだね」
吹雪はにっと口の端に笑みを乗せた。
「天龍行くんだったら僕と降渡も誘ってよ。久しぶりに里帰りしたいし」
吹雪は、流夜のやろうとしていることが大体わかっている。
流夜は、自分のルーツを潰す気だ。
自分の歩いて来た道を辿りなおして、もう一度自分を作るつもりでいる。
「……俺と降渡はともかく、お前は実家が天龍だろう」
「きょうだいの多い末っ子なんて、二、三年帰らなくても何も言われないよ」
「帰れよ」
吹雪は四人きょうだいの末っ子だった。
容姿は、一番上の姉によく似ていると言われる。
流夜たちには、吹雪は姉よりも、叔母である愛子に似ていると言われるけど。