幾久しく、君を想って。
「質問?」


まだ胸の音が小さく鳴り続けていて、これ以上何が聞きたいんだ…と耳をすます。


「さっき飲み屋で言っていた「たくみ」という人は、本当に彼氏なんですか?」


「えっ…拓海?」


ギクリとしながらも頭の中では現実の彼が浮かんでくる。

真面目そうな目をする松永さんに向けて、その答えを言うべきかどうか迷う。


本当のことを話せば引かれるような気がする。

引かれても別にいいのだけど、そうすると女子としての魅力は落ちてしまうだろうなと思う。


第一、普段会う時は一人の配達人としてしか出会わない彼に、自分のプライベートをあっさりと教えてしまってもいいのかどうか。

話したことで、逆に距離が縮まってしまうのも嫌な気がするけどーー。



あれこれと考えあぐねていると、いつの間にかガード下から地上へと出て、夜空にはきらめく星たちが見えている。



「……俺の勘違いなら悪いんだけど」


空を見上げながら話しだした人の方へと目を向け、ごくん…と小さく息を呑んだ。


「『たくみ』というのは、子供さんのことじゃないんですか?」


躊躇うこともなく問われ、真っ直ぐとその目で捉えられる。




(……参ったな…)


こう素直に聞かれてしまうと、「いいえ」とは言えず。




「……当たりです」


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