幾久しく、君を想って。
足元を行き交う人達を眺めながら、こんなふうに、人の協力を得ないといけない関係性をもどかしく思った。


私がコブ付きでなければ、きっと彼とはいつでも会える筈だった。
バツイチ同士の恋愛も悪くないよね…と笑い飛ばせた筈だ。


沈みかける気持ちを奮い起こしながら顔を上げた。
隣ビルから歩いてくる人影に気づき、ドキン…と胸が鳴った。



「やぁ、早いね」


手を上げた人が私の側に走り寄ってくる。
その姿を目にしながら、胸がじわっと熱くなった。


「こんにちは。わざわざこんな所に来てもらってすみません」


側に来た彼に頭を下げると、ワックスで髪を留めている人は、「そんなことないよ」と明るい笑顔を見せる。


火曜日以来の顔にホッとさせられ、本当は飛びつきたい心境になる。
林田さんが来なければ、直ぐにでも彼と手を繋ぎたい。


「友達はまだ?」


彼も気になる様子だ。


「まだみたいなの。いつも時間ギリギリに来る人だから」


今は二時五分前。
あと三分くらいは待つことになるかもしれない。


「拓海君は?実家?」


松永さんの口から拓海の名前が出て狼狽えそうになった。
そうです…と答えたけれど、彼は何だか不満そうな顔つきをして。


「一緒に連れて来れば良かったのに。その方が早く仲良くなれたかもしれない」


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