幾久しく、君を想って。
そうは思っても認めたくない自分が強くなっていて、こんな私でも彼が好きだと言うからいいんだ…と思い直す。

図々しくなってきた様な気もして、思い上がるのも程々にしないと駄目だと戒めた。



夜が更けて拓海がベッドで寝付いた頃、松永さんは『今いい?』と文字を送ってきた。


『いいです。拓海なら寝ました』


一年生の頃から一人寝の習慣をつけさせておいて良かった。
去年までは夜中に部屋へ来ることもあった拓海だけれど、四年生になってからはまだ一度も来ない。


少しずつ自分の時間が増えていくのは確かに嬉しい反面、やはり寂しい時もある。
成長していく拓海を思うと、しんみりとしてくる……。



ぼんやりとしたまま部屋の隅に視線を彷徨わせた。
ブーブーとスマホが振動して、彼の電話に気づいた。



「もしもし」


声が漏れないよう布団を頭から被る。
松永さんは「こんばんは」と挨拶をして「夜になっても寒くないね」と言った。


「夕方のニュースでは明日の朝方が冷え込むと言ってましたよ。風邪を引かないようにして、きちんと布団を掛けて寝ないと」


まるで拓海に言うように聞こえて、これじゃ母親と同じだ…と思う。
まずいと思いながら唇を手で覆うと、耳元で小さく笑う声がした。


「真梨さんは世話好きだね」


敢えて母親みたいとは言わない彼に、「お節介なことを言ってすみません」と謝った。


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