幾久しく、君を想って。
「どうして謝る?俺は返って嬉しいんだけど。自分を心配してくれる人がいるってことは、一人じゃないって証拠だろ?」


ここに真梨さんが居たらもっと最高なんだけどな…と、声だけは真面目そうに言ってくるから恥ずかしい。
オタオタしている自分を知られたくなくて、「早く昼間の理由を聞かせて」と急かした。


「ああ…拓海君を『アラフォー部会』に誘う理由ね」


微かに笑った様な声が戻り、「そうです!」と強い言い方をした。


「どうしてあんな大人の集まりに誘うの?」


お酒を飲む人もいれば、家庭や子供から解放されたくて来る人だっている筈だ。
皆の迷惑になると思うと反対をすれば、松永さんは「そんなこと無い」と豪語した。


「最近の部会には子供が来なかったけど、今井先輩も高もっさんも預ける場所がない時は連れて来るよ」


ただ来ると大酒が飲めないから、それで連れて来ないだけで、あの部会は本来家族の誰が参加してもいいんだ…と言った。



「だから拓海君も連れて来ればいい」


理由は納得できた。けれど、やはり拓海のことを思うと不安が大きい。


「拓海は大勢の大人には慣れてないし…」


私は一人っ子で親戚も少ない。
実家へ来る大人だって限られるし、触れ合う大人も先生か近所の人か同級生の親だけだ。



「いきなり連れて行くと尻込みするんじゃないかと思う」


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