幾久しく、君を想って。
大人らしいデート?
十五分くらい経って、スマホがブルブルと震えだした。
通話を切ってから名前を登録した人だろうかと思い、液晶画面を確認する。



『松永さん』


フルネームで登録するのは避けた。
ぱっと見、男性でも女性でもいけそうな苗字だけの表示。


躊躇いながらテーブルの上に置いてあった物を取り上げる。
通話ボタンをタップすると、さっきよりも明るめな声が聞こえてきた。


「すみません、松永です」


ごそごそと物音が響く。
まさかとは思うけど、着替え中ではないのか。



「宮野です。先程は失礼しました」


いきなり切ったことを詫びたつもりだった。
松永さんは「こちらこそ」と断り、ごそごそという物音を止める。


「出ようかどうしようかと迷って、一応…のつもりで出たらあんなことになってしまって…」


風呂には入りましたと教えられた。
思っていた以上に早いものだから要らない心配をしてしまう。


「きちんとあったまりましたか?行水程度で上がったりしてません?」


子供でもないのに…と思うけど、寒かったのではないかと気になる。


「大丈夫です」


クスリ…と笑い出しそうな感じの声。


「しっかりと湯には浸かりました。いつも通りの入浴時間です」


十五分程度で上がれるなんて羨ましい限りだ。
私はお湯に浸かったら、それだけで軽く十分は過ぎていくのに。


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