切手に想いを添えて
バッグからそれを取り出し、スッとテーブルの上に置くと、答えを急く余り、聞きたかったことが早口で口から出てしまう。



「それで…千鶴さんは祖母の初恋の人が今どうされているかご存知ないでしょうか!?
余計なお世話とは分かっているんですが、もしその方がご存命ならこの手紙を渡したいんです…と言うか…持っていてほしいんです!」



最後の裁きを待つ時の様と言ったら大袈裟かもしれないが、真剣な面持ちで千鶴さんの顔をじっと見据え、答えを待った。



「この手紙…懐かしいわねぇ…」



手紙を手に取り、大切な物を扱うようにそっと撫でて微笑を浮かべる。




「この手紙、私も読んだことがあるのよ。

渡す前に変なところがないか読んでほしいって久枝さんに頼まれてね…

私、久枝さんの前で泣いてしまったわ…

だって…私、二人が想い合っているのが分かっていたもの。
見ているこっちがもどかしくなる程。

どんなに言っても久枝さんはそんなことないって信じなかったけれど…

……ごめんなさい。初恋の人がどうしてるかだったわよね?」



「はい…」





私は黙って千鶴さんの次の言葉を待った。





「先に結論を言ってしまうと、久枝さんの初恋の人はもう亡くなっいるわ。」



「そう…ですか…」



心のどこかでは、そうじゃないかと思っていた…

祖母が女学生の時に既に働いていたとすれば、今はそれなりのお年だろう。

でも、ショックは隠せなかった…




「でも、悲しまないで。この手紙、ちゃんと読んでもらったのよ。」



「じゃあ…読んだ上で、返されたってことですか?」



「返されたのだけれど…
返されたって言うより、返事をもらったという方が正しいかしら?」




「どういう意味ですか?」




「ここからは久枝さんに聞いたことなのだけれど…

まず、このお見合いが決まった経緯から話させて。

私達が足しげく通っていた郵便局の常連さんに笹垣さんという方がいたのだけれど…

蓬屋さんっていうお菓子屋さんご存知ないかしら?」




「はい、知ってます。祖母と良く大福を買いに行きました。」



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