切手に想いを添えて
「いえ…花には全く縁がなくて…」




「朝顔の花言葉は、『はかない恋』。

なんて切ない想いを切手に添えたんでしょうね…

期待をしていたらこの切手を選んだかしら?」




切手にそんな想いが込められていたなんて…





「そして、お見合い当日…

久枝さんの気持ちを考えたら…

どんな面持ちで望んだのかしら…

でも、そこに現れたのは、初恋の人である密子さんのお祖父さんだったの。」





「えっ?えっ?どういうことですか?」




二重の衝撃を受けた。


初恋の人が現れたことにも驚いたが、それ以上に初恋の人がお祖父ちゃんと同一人物ということの衝撃が凄かった。


お祖父ちゃん、昔郵便局で働いてたとかそんな話一度も聞いたことなかったし!






「種明かしをすると、もどかしさを覚えていたのは私だけじゃなかったってことね。

当時の局長さんと常連の笹垣さんが裏で動いた結果があのお見合い話。
つまり二人をくっつけるためだった。

進士郎さん、密子さんのお祖父様もまさかお見合い相手である有名な呉服問屋の娘が、久枝さんだなんて知らなかったのよ。」




「ドラマみたいな話ですね…」




「凄い話よね。
でもドラマみたいな話はまだ終わらないのよ。」




私はまたお伽噺話を聞くようなわくわくした面持ちで耳を傾けた。




「進士郎さんはお見合いの後、久枝さんに手紙を渡した。

久枝さんから手紙を返されたと聞いた時は、進士郎さんのことをなんて嫌な奴なんだろうって思ったのだけれど。」




千鶴さんはクスクスと笑い、一口コーヒーを飲んで口を開いた。



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