最高の誕生日プレゼントをありがとう
甘える…って難しい 拓海side
あゆに約束した通り、俺はあゆの誕生日の前日と当日に連休を取った。

普段滅多に休まない俺が連休を取ることを周りは驚いていた。

「拓海、連休なんて初めてじゃないか?橘さんも一緒だし彼女、誕生日でもあるんだろ。何するんだよ?」

仕事に支障が出ないよう、俺とあゆは相談した上で付き合っている事を内緒にしている。

まあ、俺の幼馴染である秘書室の室長、河野 始には速攻でバレたけどな。

今日は久々に始と昼食を食べるため、会社近くの和食屋を訪れていた。

「何もしないよ、俺は」

うん。間違ってない。俺が何もしない事があゆの望みなんだから。

「は?彼女の誕生日に何もしないって」

始の手から箸がぽろっと落ちる。

はぁ、とため息をつき、始が箸を置くとおもむろに口を開いた。

「今日、橘さんが俺のところにきて、お前が連休取るのに合わせて連休を取りたいが、申請を出すと怪しまれるから、室長が専務の秘書であるわたしもついでに休みにした事にしてくれませんかって、めちゃくちゃ嬉しそうな顔で頼みに来たんだが…」

始は眉間に皺を寄せ、俺を軽蔑の眼差しで見ている。
普段、周囲に対し愛想を振りまいている始は、まず今俺に向けてるような顔はしない。いつでも笑顔を貼り付け、優しさの大セール。ま、女限定だけど。

我が社の人気ランキングトップらしい。あゆ情報だけどな。あゆには耳タコなほど、始を信用するなと言ってある。

「誤解するな。あゆからのおねだりだから」

「はあ?」

俺の言葉にますます始の眉間の皺が深くなる。

誤解されたままだとこの幼馴染は何をするかわからない。あゆを不憫に思い、別れることを提案した上で俺の秘書を外すなんてこと平気でするからな。

女に与える優しさを、少しは幼馴染に分けろと思う。

とりあえず、先日の話をして始の誤解を解いておくことにしてやる。

自分のために。


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