イケメンエリート軍団の籠の中
「トオルさん、じゃ、そろそろ、俺行きますわ」
凪は舞衣にはっきりと聞こえるように、わざと大きな声でそう言った。
「そうか……
明日は午前の便だから、会社には来ないんだよな…」
「落ち着いたら、片付けにまた東京に戻ってきますので」
トオルは凪ときつく握手をした。
ジャスティンも謙人も店の人間も、何度も凪と別れを惜しんだ。
舞衣も立ち上がり凪に挨拶に行こうとすると、映司がまた手を引っ張る。
「凪、元気でいろよ~
ほら、マイマイも手を振って」
舞衣はここにも捕食者がいると悟ってしまった。
イケメンエリートの底知れぬプライドは、誰にも負ける事を許さない。
それは凪も映司も一緒だ。
凪はちらりとここを見る事もなく、手を振り出て行った。
ここからが舞衣の時間との戦いだ。
舞衣はジャスティンに味方になってほしくて、何度もジャスティンに目配せをした。
やっと気づいてくれたジャスティンは、彼氏の隣に座り面白そうに微笑むだけだ。
「あ、あの、私も、今日は約束があって……
主役の凪さんを送り出せたので、私もおいとましてもよろしいでしょうか?」
舞衣は時計を見た。
ヤバい、もう3分過ぎてる……
「そんないいじゃん。
ほら、まだこのカクテルだって全然飲んでないし」
映司はカクテルを指さして、意地悪くそう言った。
「あ、そうですね……
じゃ、このカクテル、いただきます」