ジンクス
私たちがその前に立ったとき、近くの教会で結婚式でもやっているのか、鐘が鳴り始めた。

舞い散る花びらの中、奴は黙って私の手を取ると……左手の薬指に指環を嵌めた。

「これでおまえは、一生俺のもの」
 
……いわれた意味を理解するまでに数秒を要した。

「えっと、あの?」

「不服か?」

「……ううん」
 
ニヤリ。

奴の片頬が上がる。

抱き寄せられて……人前だというのにキスされた。
キスしながら、ここの公園のジンクスを思い出した。

「もしかして、ジンクスにあやかった?
教会の鐘が鳴ってるときに、この噴水の前でプロポーズしたら上手くいく、って」

「は?ジンクスなんてただの迷信だろ。
第一、こんな時間に鐘が鳴ってたのはただの偶然だし」
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