溺愛妖狐ひろいました


「あら、尊くん、今日は一緒なんだね」

「うん!亜子がいいって」



食堂に行くと、秋穂が私たちを見て尋ねる。
それに尊が嬉しそうに答えた。




「ほんと、尊くんって忠犬って感じね」




秋穂がおかしそうにクスクス笑う。
言えてる。




「え?忠犬?違うよ、おれはきつ―――」

「そうだ!尊、仕事はもう慣れた?」




おれは狐って今言おうとしたよね、尊ったら。
例えって言葉を知らないのかしら。
危ない、危ない。

まぁ、おれは狐。
そう言われたとしても、まさか本当の狐だなんて思わないだろうけれど。




「え?うん。もう聞かなくてもコピーとか、ホッチキスとかできるよ」

「そう。よかった。困ったらすぐ言うのよ」

「うん。亜子にすぐ言う」




にこっと無邪気な笑顔を向けられる。
その笑顔を、他の人にも向けれたらいいのに。



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