溺愛妖狐ひろいました


「全て忘れ、まるで幼子のように、その人間に懐き尻尾を振る様は本当に滑稽だな」

「ゔぅー!」

「な、なんなの・・・。や、やめて、尊が苦しんでる!」



言っている意味がわからない。
わからないけど、この人は私の知らない、もしかしたら尊自身も覚えていない尊を知っているんだ。

尊が人間を憎んでいる理由も、どれほどの憎しみを持っているかも。



「いくらお前が忘れようとしても、お前の罪は消えない。逃れることなどできない」

「うぅっ!がぁっっ!!」




威嚇するように尊が唸り声を上げる。
感じてしまう恐怖。

尊を怖いなんて思いたくないのに。




「み、尊・・・」

「まるでただの獣だな。それがお前の本来の姿だ。お前は、気品も地位も自分で捨て、獣に成り下がったんだ」



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