溺愛妖狐ひろいました


「ほら、食べよう」

「・・・あ、あの、亜子・・・」




何にも触れようとしない私に、躊躇いがちにミコトが声をかける。
でも、困る。

だって、なんて声をかけていいかわからない。
気にしてないよ、なんて嘘になる。
でも、許せないなんてことも言いたくない。


こうなっても私、最後までミコトを嫌いになれない。



「・・・なんでもない」




そんな私の気持ちに気づいたのか、ミコトはそれ以上何も言わずうつむいた。
私はホッとして用意した食事に手を付ける。


自分の中で整理をつけなくちゃ、ミコトにも言えないし、聞くこともできない。
今日仕事から帰ったらちゃんと話をきこう。

きっとミコト自身も戸惑ってると思うし、落ち着くべきだ。




ミコト自身で答えが出ないことなら、二人で考えよう。




「じゃあ、仕事いってくるね」

「うん」



結局家を出る時まで、ミコトは沈んだままで。
いつもの明るい見送りにはならなそうだ。




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