ビルの恋
伊坂君は私のおにぎりを二個食べた。

私は、もらったポテトチップスを一袋食べてしまった。
意外においしかったのだ。

「そろそろ行くね、ポテチありがと」

「こちらこそ、ごちそうさま。
それだけじゃ悪いから、今度ごちそうするよ」

「いいよ、この間払ってもらったし」

「夏堀さん、真面目だよね」

「え?」

「きちんとしているというか。
相手に借りを作らないタイプ」

「そうかな」

そんなことない。

自分に自信がないだけ。

「たまに食事くらい、いいだろ」

そう言うと、伊坂君は手帳を取り出した。

「ビル内なら、時間作って出られると思う」

予定を確認している。

「来週金曜日だったら、昼の予定空いてる。
この日にしよう。どこがいい?」

「急に言われても・・・」

「じゃあ、6階の洋食で。
吉野だっけ?
時間は11時30分でいい?
ランチ時は予約できないから、先に着いた方が席を確保しよう」

伊坂君はビジネスライクに予定を決めると、手帳に携帯番号とメールアドレスを走り書きした。

そのページを切り取ると、私に渡す。

「これ、プライベートの連絡先。
もし都合つかなくなったら連絡して」

どきどきする。

久しぶりだ、こういう感じ。

でも私、伊坂君とは明らかに不釣り合いだ。

なぜ、私に興味を持ったのだろう?
< 17 / 79 >

この作品をシェア

pagetop