ビルの恋
伊坂君は、毎日メールを送ってきた。

会って話したい、という内容だ。

言いたいことがあるなら、まずメールで書けばいい。
会うのはそれからだ。

返信せずに、2週間が過ぎた。

時間の経過とともに私のショックは薄れ、紀美子さんと話せる段階まで回復してきた。

「それで?二年も日本を離れるのに、遊びにおいで、だけだったの?」

紀美子さんが呆れた調子で言う。

「はい。普通、そこでプロポーズじゃないですか?」

紀美子さんはうんうん、と相槌を打つ。

「でも、ないってことは・・・やっぱり私は、伊坂君にとってそこまで魅力的じゃないのかなあ、不釣り合いだったのかなあって・・・」

涙が出てくる。

紀美子さんがティッシュをくれる。

鼻をかむ。

「・・・悲しいです」

悲しいし、惨めだ。

紀美子さんが、私の肩を優しくさすってくれた。
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