ビルの恋
「例えば?」
私は聞く。

「留学して、景観デザインや都市計画の勉強をしたいです。

社費で行って、留学後もS&Wに戻って、しばらく都市計画のコンサル経験を積めたら、理想的です」

そうなんだ。
でも斎藤さんは、本条君がサイモンの設計した高層ビルに憧れて、って言ってなかったっけ。

「高層ビルのデザインは?」

「大学院で専攻したし、面白いですが。
北海道では高層ビルの需要はほとんどありません。
景観や都市計画なら、実家の事業と関係あるので」

そうか。
本条君は真面目で、バランス感覚の人だ。
やりたいこと、すべきこと、周囲の状況をよく考えて決めるタイプだ。

「就職の自己PRみたいになりましたけど、仕事に関しての当面の見通しは、こんな感じです」

本条君は話を終えた。

「仕事についてのお考えは、よくわかりました」

私は答えた。
面接官のような口調になってしまい、本条君が笑う。

「質問は?」
と聞いてくれたので、

「仕事の話じゃなくて悪いんだけど、なんでいきなり、その・・・」
だめだ、恥ずかしくて聞けない。

「プロポーズしたのか?」
本条君が察して、言葉を補う。

私は頷く。

< 67 / 79 >

この作品をシェア

pagetop